西ウイミンズクリニック > 治療内容 当院で実施している先進医療
先進医療とは、高度な医療技術を用いた治療やその他療養のうち、公的医療保険が適用されないが、一般の保険診療との併用が認められているものを指します。医療技術ごとに施設基準が設けられており、厚生労働省から認定された医療機関でしか実施することはできません。
厚生労働省の認定 | 保険診療と併用 |
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認定をうけた医療機関 | 可 |
認定をうけていない医療機関 | 不可 |
不妊治療に関わる先進医療と費用
現時点で先進医療として告示されている検査・治療は、こども家庭庁ホームページよりご覧になれます。
本来であれば先進医療にあたる部分の費用は自費になりますが、福井県では特定不妊治療費助成制度があり、先進医療もその対象となっています。年齢や回数の制限がありますので詳しくは福井県にご確認・ご相談ください。
生殖補助医療の各段階と先進医療
生殖医療の各段階 | 先進医療 (項目名クリックで、各項目の説明にジャンプします) |
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①排卵誘発・採卵 | |
②採精・精子選別 | *膜構造を用いた生理学的精子選択術(Zymot) ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI) 強拡大顕微鏡を用いた形態的精子選別術(IMSI) |
③受精 | |
④胚培養 | *タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養 |
⑤胚移植・着床 | *子宮内細菌叢検査1(EMMA/ALICE) 子宮内細菌叢検査2(子宮内膜フローラ) *子宮内膜受容能検査1(ERA) 子宮内膜受容能検査2(ERPeak) 子宮内膜刺激術(SEET法) 二段階胚移植術 子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ) 反復着床不全に対する投薬(タクロリムス) |
⑥その他 | 着床前胚異数性検査(PGT-A/SR) 流死産検体を用いた遺伝子検査 |
*赤字当院で行っている先進医療 厚生労働省ホームページより改編
●採精・精子選別に関わる先進医療●
- *膜構造を用いた生理学的精子選択術 (ZyMot:ザイモート)
- ~当院はZymotの先進医療実施機関として承認されています~
特殊な膜構造をもつ「ZyMōt(ザイモート)スパームセパレーター」という器具を用いて、運動性が良好な精子を抽出・回収する方法です。遠心分離は行わないので、精子のDNAの損傷を防ぎ、良好な精子の抽出が可能となり、顕微授精および体外受精の胚培養成績の向上、妊娠率・着床率の上昇、流産率の低下が期待されます。
ZyMotは顕微授精をされる方が対象です。
精液量や運動精子量が著しく少ない場合には実施できない場合もあります。 - ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術PICSI(ピクシー)
- ヒアルロン酸を含有する培地を用いて、成熟した精子を選別し、顕微授精する方法です。正常な成熟精子(DNAや染色体に異常の少ない精子)はヒアルロン酸と結合する特性があります。正常な成熟精子を顕微授精に用いることで胚移植後の流産率の低下が期待できます。
- *当院では、現時点でPICSIは実施に向け準備中です。
- IMSI(イムジー);強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別法
- 強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術(IMSI)」は強拡大(1000倍以上、最大倍率6000倍)で精子を観察し、頭部の空胞などといった構造異常のない良好な形態の精子を選別し、顕微授精を行う技術です。
- *当院では、現時点では、IMSIは行っておりません。
●胚培養に関わる先進医療●
- *タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
- ~当院はタイムラプスの先進医療実施機関として承認されています~
培養器に内蔵されたカメラによって、胚培養中の胚を一定間隔で自動撮影し、培養器から取り出すことなく、正確な胚の評価が可能となる技術です。成長速度や異常な受精、分割が明らかになり、培養成績、着床率、そして妊娠率の向上が期待されます。
●胚移植(着床)に関わる先進医療●
- *子宮内膜細菌叢検査1(EMMA/ALICE)
- ~当院は子宮内膜細菌叢検査先進医療実施機関として承認されています~
EMMA検査とは子宮内膜マイクロバイオーム検査と呼ばれるものです。
EMMAにより子宮内の微生物環境が胚の着床に最適かどうか判断します。また、子宮内膜の健康な菌(ラクトバチルス)の割合を測定します。EMMAにより、子宮内膜細菌叢を評価し、子宮内膜細菌叢のバランスを整える最善のプロバイオティクス治療を推奨し、妊娠の見通しを高めます。 - ALICE検査とは感染性慢性子宮内膜炎検査です。
慢性子宮内膜炎の原因になる細菌を調べる検査で、EMMA検査とセットで行います。慢性子宮内膜炎は細菌感染により起こり不妊症、不育症の原因の一つとなります。対象となる方は、胚移植をしたが着床しない又は早期流産を繰り返す方です。この検査の結果、慢性子宮内膜炎は不妊症患者の約30%が罹患しており、習慣性流産や着床不全患者では約66%が罹患していると言われています。この検査を行うことで子宮内膜炎の原因菌を検出し、適切な抗生物質と治療法を推奨してくれます。慢性炎症を治療すると妊娠率が上昇すると言われています。 - 子宮内膜細菌叢検査2 (子宮内フローラ)
- 子宮内細菌叢の正確な把握ができる検査。黄体期に子宮内膜を含む子宮内腔液を採取し、それに含まれる細菌の16S リボソーム RNA を次世代シークエンサーを用いて解析し、子宮内善玉菌であるLactobacillus 属の占める割合、その他細菌叢の分布を明らかにします。
- *当院では、現時点では対応する検査としてEMMA・ALICEを行っており、子宮内フローラ検査は行っておりません。
- *子宮内膜受容能検査1(ERA)
- ~当院は子宮内膜受容能検査先進医療実施機関として承認されています~
EMMA検査とは子宮内膜マイクロバイオーム検査と呼ばれるものです。
ERA検査(子宮内膜受容能検査)とは、移植の適切なタイミングを調べる検査です。子宮内膜には着床に適した期間(着床の窓)があります。この期間は個人により異なります。胚移植の段階にあわせた子宮内膜を遺伝子レベルで検査し、個々の着床の窓を特定します。対象となる方は良好胚を2回以上移植しても着床に至らない方です。その結果、胚移植での妊娠率が約25%向上しています。 - 子宮内膜受容能検査2(ERPeak)
- ERPeak℠はERA検査と同じく、着床の窓をみる検査です。ERAの後からでた新しい検査です。ERAに比べて少量の検体できるのが特徴です。
- *当院では、現時点ではERAを行っており、ERPeakは行っておりません。
- 子宮内膜刺激術(SEET法)
- 着床能を上げるための治療法です。子宮内膜刺激胚移植法とも言います。ご自身の胚を育てた培養液を胚移植数日前に子宮に注入し、受精卵の着床に適した環境を作り出す技術です。受精卵(胚)は、成長をしながら子宮に向けてシグナルを送り、子宮内膜はこのシグナルをキャッチして、数日後に子宮に到着する胚の受け入れ態勢を整え、着床に向けて準備を始めます(クロストーク)。まず胚からのシグナルを含む培養液を凍結保存します。次に移植する周期(凍結融解周期)に、凍結しておいた培養液を融解し子宮の中に注入します。その2~3日後に、胚盤胞を1個移植します。SEET法の最大のメリットは、移植に用いる胚盤胞を1個にすることで、多胎を防ぐと同時に、妊娠率を向上させることにあります。
- *当院でSEET法は実施可能です。
- 二段階胚移植術
- SEET法と同じく、着床能を上げるための治療法です。同じ移植周期に、初期胚をまず1個移植し、更にその2~3日後(受精後5日目)に胚盤胞を1個移植する方法です。先に移植した胚が子宮内膜にシグナルを送ることにより、2個目に移植する胚盤胞の着床の環境をよくすることが目的です。ただし、日本産婦人科学会は、多胎を防ぐ観点から、原則1個の胚移植を推奨しています。1個目の初期胚が2個目の胚盤胞のためのいわゆる’捨て駒’となってしまう、または、1個目の初期胚が子宮内でうまく育たない場合、かえって2個目の胚盤胞の妊娠継続に悪影響を及ぼす可能性が否定できず、この点からは二段階胚移植術よりはSEET法がより望ましいと考えられます。
- *当院では、二段階胚移植術は行っておりません。
- 子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)
- 着床能を上げるための治療法です。胚移植を行う予定の前周期に子宮内膜のスクラッチ(局所内膜損傷を与える)を行い、翌周期に胚移植を行う技術です。比較的安全かつ簡便な手法であると認められています。欧米でも広く行われていますが、大規模な比較試験では妊娠率の有意な上昇は得られていません。
- *当院では、子宮内膜スクラッチは行っておりません。
- 反復着床不全に対する投薬(タクロリムス)
- 反復着床不全に対して、免疫抑制剤(タクロリムス)の投与を行う技術です。受精卵が子宮内膜に着床する際、免疫寛容が十分に働かない事が不妊症の原因の一つと考えられ、このような母体-胎児間の免疫学的な異常による不妊症に対して、免疫抑制剤であるタクロリムスを投与し、母体の免疫状態を正常化することにより妊娠を成功させることが期待されています。タクロリムス治療は先進医療Bに分類されており、現在その担当施設において有効性ならびに安全性について症例を蓄積しつつ解析の途中です。
- *当院では、タクロリムスは行っておりません。
●その他の生殖補助医療に関わる先進医療●
- 着床前胚異数性検査(PGT-A)
- 着床前遺伝学的検査(PGT-A)とは体外受精によって得られた受精卵の染色体の数の変化を調べる検査です。染色体の数に変化があると、その受精卵は着床できなかったり、着床できたとしても妊娠初期に流産となったりしてしまいます。染色体の数に変化がない受精卵を子宮に戻すことで、流産を減らし、妊娠率や出産率を高めることを目的とした検査です。先進医療Bで、現在日本国内の一部の医療機関のみで臨床研究として実施されています。当院は先進医療Bの承認施設ではありません。
- *当院では、日本産科婦人科学会のPGT-A承認実施施設として、学会細則に従い、自費診療でPGT-A・SRを行っています。福井県では、PGT-A・SRは、国で審議中の技術等と組み合わせて実施される特定不妊治療として特定不妊治療費助成制度の対象となっています。
- 流死産検体を用いた遺伝子検査(次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査)
- 流死産の真の原因を検査する目的で行われます。過去に1回以上の流産歴があり、今回妊娠で臨床的に流産と診断された方が対象です。子宮内に 流産胎児、絨毛が残存している場合、または、体外に排出されたが流産胎児・絨毛を回収できた場合に、次世代シーケンサー(NGS)を用いて染色体の数的異常、不均衡型構造異常の有無の解析をおこないます。これにより、流産・死産の原因を確定できる可能性があります。なお、「流産検体を用いたG-banding法での染色体検査」は、令和4年4月1日より保険適用となっています。G-banding 法は、培養法であるため、無菌的に流死産検体を子宮内から採取する手術が必要であり、自然排出例、また、凍結保存例では実施できません。NGSではこれを克服しうる方法です。
- *当院では、次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査は行っておりません。
G-banding法での染色体検査は実施しています。